イノベーションによる社会経済発展の源泉としての基礎科学
- ウオーターマン、A. T.「[National Science Foundation (1960) Proceedings of a Conference on Academic and Industrial Basic Researchの]日本語版の発刊を祝って」
「科学技術が経済発展の原動力として大きな役割を果たしている事実については,日本はもちろんアメリカにおいても最近関心がいっそう高まってきております.とくに近年,驚異的成長を遂げた日本の経済を見ますと発展の重要な原動力の一つとして,科学と技術の成果が工業生産に結集されたことをあげなければなりません.また,このような技術革新のモチベイションも,研究開発に必要な諸経費も,日本の産業界によって主に生み出され賄われたことをあわせて特記する必要があると思っています.日本と同じように,近年におけるアメリカの経済発展も,研究開発の成果から新しい製品や新しい製造工程がつぎつぎに生み出された結果によるものであります.
基礎研究は,日本でもアメリカでも,昔から主に大学の科学者•技術者によって行なわれてきました.産業界が新しい製品を開発したり新しい製造工程を生み出すためには,基礎研究が大切であってその成果が長い間に実を結ぶという認識が最近,日本でもアメリカでも高まってきております.」National Science Foundation(館林晶平訳、1965)『技術革新と基礎研究』山海堂
本文章を執筆したウオーターマン、A. T.は、1951年から1963年7月までアメリカ大統領府国立科学財団(National Science Foundation)の長官を務めた人物である。 - 文部科学省基礎科学力の強化に関するタスクフォース(2017)『基礎科学力の強化に向けて-「三つの危機」を乗り越え、科学を文化に-(議論のまとめ)【本文、参考資料】』p.1
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/06/07/1384930_02_1.pdf
「基礎科学は、新たな知を創出、蓄積し持続的なイノベーションによる社会経済の発展の源泉となるものであり、その振興が極めて重要であることは論を俟たない。」
文化としての学術研究・基礎研究-短期的有用性とは異なる
「我が国は、科学技術の発展を国の繁栄の礎と政策的に位置付けているが、1.で記した学術研究・基礎研究の意義について社会の各界、国民一人一人のレベルで理解され、浸透しているとは言い難い。研究の価値について、すぐに役に立つか否かという尺度で論じる意識・価値観は依然として根強く、その半面、真理を探究する営みそのものを文化として位置づけ、十分な価値を認めるには至っていない。」文部科学省基礎科学力の強化に関するタスクフォース(2017)『基礎科学力の強化に向けて-「三つの危機」を乗り越え、科学を文化に-(議論のまとめ)【本文、参考資料】』p.5
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/06/07/1384930_02_1.pdf
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/06/07/1384930_02_1.pdf
イノベーションによる社会的課題・経済的課題の解決には科学技術イノベーションが不可欠、イノベーションの源泉としての学術研究・基礎研究
「世界的に先例のない少子高齢化とそれに伴う人口減少が進む我が国は、社会的・経済的な課題を多数抱えており、これらを解決し、国民生活を豊かにするためには、社会変革をもたらす科学技術イノベーションが不可欠である。また、我が国が科学技術イノベーションを持続的に創出するためには、人材、知、資金といった基盤的な力の強化と、世界に広がる知的資源を迅速かつ効果的に活用していく仕組みの構築が必要である。基本計画は、こうした認識に立ちつつ、学術研究・基礎研究を「イノベーションの源泉」として位置づけ、その推進を重視する方針を示すとともに、これにかかわる達成目標(総論文数の増加、総論文数に占める被引用回数トップ10%論文数の割合を基本計画期間中に10%等)を掲げている。」文部科学省基礎科学力の強化に関するタスクフォース(2017)『基礎科学力の強化に向けて-「三つの危機」を乗り越え、科学を文化に-(議論のまとめ)【本文、参考資料】』p.6
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/06/07/1384930_02_1.pdf
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/06/07/1384930_02_1.pdf
新たな社会を設計し、価値創造の源泉となる「知」の創造
新たな社会を設計し、その社会で新たな価値創造を進めていくためには、多様な「知」が必要である。特にSociety 5.0 への移⾏において、新たな技術を社会で活⽤するにあたり⽣じるELSI24に対応するためには、俯瞰的な視野で物事を捉える必要があり、⾃然科学のみならず、⼈⽂・社会科学も含めた「総合知」を活⽤できる仕組みの構築が求められている。
また、「知」は、⾮連続な変化に対応し、社会課題を解決するイノベーションの創出の源泉である。研究者の内在的な動機に基づき、新しい現象の発⾒や解明、新概念や価値観の提⽰を⾏うことで、フロンティアを切り拓いていく必要がある。基礎研究・学術研究をはじめとした多様な研究の蓄積があり、その積み重ねの結果として、時に独創的な成果が創出され、世界を変えるような新技術や新しい知⾒が⽣まれる。」『第6期科学技術・イノベーション基本計画』p.14
https://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/6honbun.pdf
また、「知」は、⾮連続な変化に対応し、社会課題を解決するイノベーションの創出の源泉である。研究者の内在的な動機に基づき、新しい現象の発⾒や解明、新概念や価値観の提⽰を⾏うことで、フロンティアを切り拓いていく必要がある。基礎研究・学術研究をはじめとした多様な研究の蓄積があり、その積み重ねの結果として、時に独創的な成果が創出され、世界を変えるような新技術や新しい知⾒が⽣まれる。」『第6期科学技術・イノベーション基本計画』p.14
https://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/6honbun.pdf