「生産」=「モノや力の結合」(Kombination)
シュムペーターは、Schumpeter,J.A.(1926) Theorie der Wirtschaftlichen Entwicklung, 2nd ed.[(塩野谷祐一・中山伊知郎・東畑精一訳、1977)『経済発展の理論』岩波文庫頁、(塩野谷祐一・中山伊知郎・東畑精一訳、1980改訳)『経済発展の理論』岩波書店]において下記引用にあるように、生産を「いろいろな物や力を結合する」こととして捉えている。
Technisch wie wirtschaftlich betrachtet, „schafft” die Produktion nichts im naturgesetzlichen Sinne. Sie kann in beiden Fällen nur vorhandene Dinge und Vorgänge — oder „Kräfte” — beeinflussen, lenken. Wir brauchen nun für das Folgende einen Begriff, der dieses „Benützen” und „Beeinflussen” erfaßt. In „Benützen” liegt eine Menge verschiedenartiger Verwendungen der Güter, eine Menge von Modalitäten, sich den Dingen gegenüber zu verhalten. In „Beeinflussen” liegen alle Arten von örtlichen Veränderungen, von mechanischen, chemischen usw. Prozessen. Stets aber handelt es sich darum, etwas vom Standpunkte unserer Bedürfnisbefriedigung Anderes zu erzielen, als was wir vorfinden. Und stets handelt es sich darum, die gegenseitigen Beziehungen der Dinge und Kräfte zu verändern, Dinge und Kräfte zu vereinigen, die wir getrennt vorfinden, und Dinge und Kräfte aus ihrem bisherigen Zusammenhange herauszulösen.
生産は、技術的視点から見ても経済的視点から見ても、自然法則的意味においては何も「創造」しない。生産は、どちらの視点から見ても、既存のモノおよびプロセス(すなわち「力」)に影響を与え、[一定の方向に]誘導できるだけである。[既存のモノや力といった]これらを「活用する」、および、これらに「影響を与える」ということを理解するために、以下のような概念[的理解]が必要である。「活用する」(Benützen)ということの中には、[様々な]財に関する多種多様な数多くの使用(Verwendungen)形態、モノの取り扱われ方に関する数多くの様相が含まれている。「影響を与える」(Beeinflussen)ということの中には、場所的移動、機械的変化、化学的変化などあらゆる種類の変化が含まれている。しかし[重要なことは]、欲求充足という視点から、我々が現に見ている[既存の]モノとは(als was wir vorfinden)異なったものを創り出す(erzielen)ことである。すなわち、それは常に、もろもろのモノおよび力の相互関係(gegenseitigen Beziehungen)を変えること、[すなわち]分離している(die wir getrennt vorfinden)モノや力を結合したり、[現に結びついている]モノや力をそれまでの関係(ihrem bisherigen Zusammenhang)から解放したりすることである。
生産は、技術的視点から見ても経済的視点から見ても、自然法則的意味においては何も「創造」しない。生産は、どちらの視点から見ても、既存のモノおよびプロセス(すなわち「力」)に影響を与え、[一定の方向に]誘導できるだけである。[既存のモノや力といった]これらを「活用する」、および、これらに「影響を与える」ということを理解するために、以下のような概念[的理解]が必要である。「活用する」(Benützen)ということの中には、[様々な]財に関する多種多様な数多くの使用(Verwendungen)形態、モノの取り扱われ方に関する数多くの様相が含まれている。「影響を与える」(Beeinflussen)ということの中には、場所的移動、機械的変化、化学的変化などあらゆる種類の変化が含まれている。しかし[重要なことは]、欲求充足という視点から、我々が現に見ている[既存の]モノとは(als was wir vorfinden)異なったものを創り出す(erzielen)ことである。すなわち、それは常に、もろもろのモノおよび力の相互関係(gegenseitigen Beziehungen)を変えること、[すなわち]分離している(die wir getrennt vorfinden)モノや力を結合したり、[現に結びついている]モノや力をそれまでの関係(ihrem bisherigen Zusammenhang)から解放したりすることである。
[Schumpeter(1926)p.16-17, (1977訳)pp.49-50, (1980改訳)pp.54-55,なお[]内は引用に際して補った語句である。(1977訳)および (1980改訳)の訳では、beeinflussen, lenkenの個所が「作用し、これを支配する」と訳されているが、beeinflusseの対象の一つとしてプロセス(すなわち「力」)が挙げられているため「作用し」ではなく、「影響を及ぼし」と訳を変更している。またlenkenを「支配する」と訳すのはあまりにも意味が強すぎると思われるので、「影響を及ぼし」との対応もあり、「誘導する」と訳を変更している。
以下においても、日本語訳に関して断りなく訳を一部変更しているので、論文等での引用の際には注意されたい。]
以下においても、日本語訳に関して断りなく訳を一部変更しているので、論文等での引用の際には注意されたい。]
Technisch wie wirtschaftlich betrachtet heißt also Produzieren die in unserm Bereiche vorhandenen Dinge und Kräfte kombinieren.・・・Jeder konkrete Produktionsakt verkörpert für uns, ist für uns eine solche Kombination.
生産とは、技術的視点から見ても経済的視点から見ても、われわれの領域内に現に存在するモノや力を組み合わせることである。・・・すべての具体的生産行為は、我々にとって、そうした結合(Kombination)である。
[Schumpeter(1926)p.17, (1977訳)p.50,(1980改訳)p.55]
生産とは、技術的視点から見ても経済的視点から見ても、われわれの領域内に現に存在するモノや力を組み合わせることである。・・・すべての具体的生産行為は、我々にとって、そうした結合(Kombination)である。
[Schumpeter(1926)p.17, (1977訳)p.50,(1980改訳)p.55]
「モノや力の結合」を「生産」として捉えるSchumpeterの視点からは、新しい生産物を創りだすことや、新しい生産方法を創り出すことは、「モノや力の結合の仕方を変更する」ということに他ならない。
Produzieren heißt die in unserem Bereiche vorhandenen Dinge und Kräfte kombinieren (vgl. oben S. 17). Anderes oder anders produzieren heißt diese Dinge und Kräfte anders kombinieren.
生産とは、われわれの領域内に現に存在するモノや力を組み合わせることである(p.17参照)。異なる生産物、あるいは、異なる仕方での生産とは、モノや力をそれまでとは異なる仕方で結合するということである
[Schumpeter(1926)p.100, (1977訳)p.182,(1980改訳)p.151]
生産とは、われわれの領域内に現に存在するモノや力を組み合わせることである(p.17参照)。異なる生産物、あるいは、異なる仕方での生産とは、モノや力をそれまでとは異なる仕方で結合するということである
[Schumpeter(1926)p.100, (1977訳)p.182,(1980改訳)p.151]