「個別企業における全体最適化」追求としてのBusiness Process Reengineeringから、「複数企業にまたがる供給=調達プロセスの全体最適化」追求としてのSCMへ

Innovation vs Reengineering

業務プロセスの「最適化」追求としてのBusiness Process Reengineering(BPR)を、Innovationと位置づけるのは適切なのか?

 
「バブル経済崩壊後の構造的不況の続く日本企業は,なんとか現状を打破しようとサプライチェーン•マネジメント(Supply Chain Management SCM)に高い関心を寄せている。その背景には,大きな期待をかけて取り組んだリエンジニアリング(Business Process Reengineering : BPR)の行き詰まりや企業間のパートナリング(経営協力化)の必要性の増大,さらにはコラボレーション(協働)とアジリティ(俊敏性:迅速かっ柔軟)への関心の高まり,といった要因があるものと考えられる。
現在,なぜ多くの企業がこのようにBPRに対して行き詰まりを感じているのであろうか。その最大の理由は,BPRが「個別企業」の全体最適をめざしていることにあるように思われる。すなわち,企業間のパートナリングやコラボレーションによる,サプライチェーン(供給連鎖)全体としての競争優位が求められる今日,個別企業の最適化のみでは不十分となっているのである。
これに対してSCMは,従来は部門ごと,個別企業ごとの最適化にとどまっていた情報,物流,キャッシュに関わる業務の流れを,サプライチェーン全体の最適化へとシフトさせようとするマネジメント•コンセプトである。情報技術(Information Technology;以下,IT)の活用による情報共有と全体最適のための業務プロセスの改善•改革を通じて,サプライチェーン全体のキャッシュフロ一の効率を向上させるのである。」

山下洋史、諸上茂登、村田潔(2003)『グローバルSCM』有斐閣、はしがき,p.I

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